「春を恨んだりはしない-震災をめぐって考えたこと」池澤夏樹

2012 年 1 月 11 日

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副学長 二木立

 

 

 

 

 

東日本大震災と福島第一原発事故直後に感じたことを「薄れさせてはいけないと繰り返し記憶に刷り込む」ために書かれた本です。写真を含めて123頁の薄い本ですが、震災の「全体像」を描こうとする作者の真摯な気持ちがヒシヒシと伝わってきます。数多い類書との違いは、作家としての「感性」と大学で物理学を勉強して身につけた「理性」とが絶妙に融合していることです。この強みは、特に「7 昔、原発というものがあった」で発揮されています。私が一番勉強になったのは、原子力の「平和利用」は「敗北の歴史」だったことです。「最初期にあった『原子力機関車』はプランの段階で消え、『原子力船』はアメリカのサヴァンナ号も日本のむつも実用には至らなかった」(85頁)。
次の2個所は特に心に残りました。「災害が起こって次々に策を講じなければならない時にシニカルな総論を言っても始まらない。我々はみな圏外に立つ評論家ではなく当事者なのだ」(99頁)。「震災と津波はただただ無差別の受難でしかない。その負担をいかに広く薄く公平に分配するか、それを実行するのが生き残った者の責務である。亡くなった人たちを中心に据えて考えれば、我々がたまたま生き残った者でしかないことは明らかだ」(108頁)。私もこの視点から、被災者支援を微力ながら、息長く続けていこうと思いました。

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