6人に1人と言われる「チャイルドプア」の現実に立ち向かう! ~神奈川県地域同窓会が設立30周年~

日本福祉大学は今年で創立62年。
その卒業生が集う、日本福祉大学神奈川県地域同窓会は今年で設立30周年を迎えました。
その神奈川県地域同窓会の30周年記念イベントが11月7日(土)に、横浜市上大岡のウィリング横浜で開催されました。
記念講演では、NHKで放映されている「クローズアップ現代」という番組で、「チャイルド・プア」と呼ばれる子どもの貧困問題に取り組む、報道番組ディレクターの新井直之氏が、100名を超える参加者に向けて、子どもの貧困問題の現実と今求められていることについてお話をされました。
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新井さんは、子どもの貧困問題について、「ライフワークとして取り組んでいる」とのこと。
6・7年前に取材で、一般の家庭にも貧困の問題が進行している現状を知り、なんとかしたいとの思いが生まれたのだそうです。
「チャイルド・プア」という造語を作って、子どもの貧困について取材し、その姿を番組を通じて伝えています。
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国は親から子への貧困連鎖を食い止めるとしていますが、相対的貧困率は過去最悪を更新中の状況が続いています。
相対的貧困率とは、社会で生きていくために必要な所得を得られない人の比率のこと。
3人世帯では手取り収入が211万円に満たない世帯のことを指します。
特に、ひとり親家庭の貧困率は54.6%と、OECD先進国の中で最悪の状況で、特に母子家庭が深刻であることが取材を通じて明らかになってきました。
多くの母子家庭の母親は正規の職業に就けずに、賃金の低いパートやアルバイトである場合が多く、養育費の支払い率も20%程度に止まっていることから、より深刻な状況になってしまうのだそうです。
経済的貧困が子どもに及ぼしている現象には、「学校に行けない」、「車上生活」、「修学旅行や遠足に行くお金がない」、「お金がないので病院に行けない」、「給食だけが唯一の食事」などがあり、夏休みになると給食がないので、食べるものがなくてげっそり痩せてしまう子どもがいることも取材を通じて分かったそうです。
「親の貧困」の場合は2年間不定期労働でなんとかしのいで、3年めでなんとかなったという話はありますが、子どもにとって「失われた2年間」の影響は、その後の一生を変えてしまうくらい大きいと新井さんは言います。
勉強が分からなくなる、友達を失う、不登校になる、日常生活の基本的なことが身につかない、基本的なコミュニケーションがとれない、といった状態になり、そしてそのまま大人になるのが「失われた2年間」を経験した子どもたち。
「ここに来れば助けてあげるよ」では、その子どもはそこに来る方法も分からず余裕もない状態に追い込まれてしまうのが実際の姿だそうです。
子どもは経済的な我慢を重ねることで、自己肯定感や自信を失ってしまいます。 そうすると頑張れなくなり、引きこもりや高校中退、孤独感から早期結婚と離婚などが起きる情況をいくつも目にしているとのこと。
学校現場も保育現場も福祉の現場も人出不足や多忙で疲弊しているが、教育と福祉、地域をつなぐ役割が必要になっていると、新井さんは、社会福祉を学んで社会福祉の現場で活躍する日本福祉大学卒業生の方々への期待を語りました。
教員志望の学生も、学生時代にこうした貧困世帯の子どもと接するボランティア活動に関わると、教師になった時に貧困世帯の子どもについて理解ある教員になることができるというメリットも語られました。
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国の支援は、スクールソーシャルワーカー配置の拡充が示された以外は既存の対策のみ。しかもスクールソーシャルワーカーへの待遇改善も何もなく、 改善の目標数値もないのが現状。
生活困窮者自立支援法が施行され、生活保護費も切り下げられる状況で、生活困窮者にはまだ厳しい状況が続きます。
一方、民間では、子どもの貧困対策センター一般財団法人あすのばが、子どもの貧困対策に関する提言を発表し、当事者が何を望んでいるかを発信しているという取り組みが紹介されました。
新井さんは、まず可視化を始めとした実態把握が必要で、テレビでも子どもの貧困に関する実態を一層きちんと伝えていきたいと自らの決意を語るとともに、仕事やビジネスの延長で、子どもの貧困のために何ができるかを考え、新規事業や投資対象の事業として知恵を出すことで、これまでの枠を超えた発想や支援が出ることを期待していると述べました。
さらに、親を批判する「自己責任論」だけでは解決できない現状があることを知ることを知ってほしいと訴え、貧困に苦しむ子どものことをまず知って何ができるかを一人一人が考えていくことが必要だと会場の全員に呼びかけました。

この講演の後は、30周年を振り返る懇親会。
昔懐かしい写真が紹介されたり、学生時代の思い出話に花が咲いたりと、参加者のみなさんのこれまでの歩みを振り返る場となりました。
神奈川県内でも子どもの生活支援や自立支援に携わってきたご経験を持つ卒業生の方も多数おり、この日の講演と交流を力に、また県内の福祉の発展とのために頑張るエネルギーを得た一日となりました。
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