「人が人を裁くということ」小坂井敏晶

2011年12月22日

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学長 加藤幸雄

 
 
 
 
裁判員裁判が2009年5月にスタートしてから2年半を経過しました。2011年1月末現在の最高裁判所の速報値によると、裁判員として公判期日に出席した人は、5万6千人に及ぶとのことです。一番長く裁判に関わったケースは、2011年10月31日に判決が出た大阪パチンコ店放火殺人事件の60日ですが、平均出廷日数は3~4日です。
裁判員裁判は、英米の陪審裁判と違い、有罪無罪の判定にとどまらなくて、裁判官と一緒に量刑、判決にまでかかわります。
裁判員裁判のあり方については、色々な意見があろうかと思います。私は市民が裁判に直接かかわることはよいことだと思っています。
ところで、みなさんは裁判員裁判のことをどれだけ知っていますか。そもそも刑事裁判は何のために行うか、どれだけ理解しているのでしょうか。
紹介の本は、タイトルの通り、人が人を裁くということの本質に迫るものです。みなさんが、いつか裁判員裁判に関わる日がくることを想定し、裁きとは何かを考える糧としていただければ幸いです。
この本で、とくに印象に残るのは、犯罪行為とは自由意思で行われるもので、自己責任をとるかたちで、刑を科されることは自明と考えてよいのかという点に、こだわっていることです。人間は、生まれ落ちる場所を選べません。育つ環境によっては発達や人権が保障されない場合もあります。裁きは合理的、論理的ですが、裁かれる人の多くは、その真逆で、実は自己責任を取る力が乏しい場合が少なくないのです。この本は、そのあたりを考えるヒントを与えてくれると思います。
私は、現在、学長であると同時に、日本司法福祉学会の会長です。社会福祉の領域は、案外司法との関わりが深く、市民後見や刑務所出所サービスや更生保護などますますその関係が深まると思います。また、身近で法的問題解決に直面することが増えることを想定すれば、市民教養として、法律に親しむことをお勧めします。
この本は、その一助にもなるかと思います。

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