自分が社会人としての鑑になる
岐阜県多治見市出身の有嶋翔さん。高校時代にバレーボール部の活動を通じて教諭になることを決意し、大学時代は健康科学部の教諭過程で免許を取得。2014年に卒業後は、現在の職場である岐阜県立大垣工業高等学校へ配属され今年で4年目になります。いつかは絶対に母校で働きたいという有嶋さん。教諭の仕事に対しての熱い想いをお話しいただきました。
━━教諭のお仕事は、具体的にどんなことをされていますか?
勉強を教えることはもちろんですが、就職や進学の支援、生徒同士の人間関係の調整、保護者の方の対応など本当にたくさんの仕事があります。工業高校は卒業後に就職する生徒が多いため、企業の方とお話しする機会もありますね。でも、子ども達と接する事が一番の仕事です。
━━実際に教諭の仕事をしてみて、この仕事はいかがですか?
毎日が真剣勝負です。スポーツで言うと練習試合はなく、毎日本番のような感じでしょうか。初めて担任を持った頃は、生徒もこの仕事も正直嫌いになり、なんのために働いているのかわからなくなった時期がありました。でも、毎日、生徒と向き合っていく中で、まずは自分がしっかりしなければという責任感が自分の中にできていった気がします。ただ教諭を目指していた教育実習の時の自分と、今の自分とは、仕事に対する意識は全く違っています。
━━有嶋さんの仕事での役割はどのようなことですか?
生徒たちに、働く知恵や生きていく知恵を伝えることだと思っています。工業高校の生徒はここが社会に出る前の学びの最終場所になるので、ここで学んだことがこれからの人生に大きく影響します。だからこそ、生徒たちが社会で自立できるために必要なことはしっかり伝えていきたいですし、何より、自分自身が社会人としての姿を見せなければいけないと意識しています。
━━印象的なエピソードはありますか?
昨年、初めて卒業生を送り出したことですね。卒業式後の最後のホームルームで生徒に直接伝えたことなのですが、そのクラスは周りから見ても大変なクラスで、先ほども話したように、最初は彼らのことが嫌いでした。でも、2年の間、どうすれば生徒たちが外の世界に出てやっていけるかを意識して色々と自分なりに挑戦して彼らと関わっていると、だんだんと生徒に伝わり、彼らが変わっていく姿もみられました。最後の時間、名簿を一切見ずに、ひとりひとりの顔を見て名前を呼んでいったのですが、やんちゃでどうしようもなかった生徒らが、真剣な表情でこちらを見て「はい」と力強く返事をする姿には、こみ上げてくるものがありました。
━━有嶋さんにとってのやりがいはどんなことですか?
生徒が社会に出て頑張っている姿をみることです。つい先日、卒業した生徒が訪問してくれました。学校が嫌いで、「先生の言う事なんて聞くものか!」って言っていた生徒が、給料をもらったといって菓子折りを持って顔を見せに来たのです。その際に、「働いてみて、先生が言ってくれていたことがやっとわかった」と言ってもらえ、あきらめずに伝え続けてきてよかったと思えました。
━━働いてから気づいた岐阜の魅力はどんなことですか?
各地域に、その土地に根差した企業があることは魅力です。特に西濃は地元企業に就職する生徒が多く、企業から学校へ講師に来てくれることもあります。また、小学校や中学校に生徒が授業をおこないに訪問したり、ショッピングモールに出向いて地域の方たちと関わる取り組みもあり、地域でつながりがあることは良い環境だと感じます。
━━地元就職を目指す後輩へのメッセージをお願いします。
就職して地元に戻ると、その地域を支える立場になります。そこで、どうやったら、その場所で、その地域で自分の力を発揮できるかを考えて働いてほしい。持っている力を出してほしいです。きっと、発揮できる力があるはずです。また、大学時代に、色んな場所に行って、色んな人と話して、大学以外の外の世界を経験しておくと、発揮できる力も広がると思います。
〜インタビュアーの感想〜
私自身中学3年生の頃から先生になりたいと思っていた時期があったため、「うわ、私も教師やってみたいな」と思いました。今日の話で一番印象的だったのは、担任をした3年生の生徒の卒業式で、名簿ではなく顔を見て名前を読み上げ、いままでやんちゃしていた生徒が「はい」と返事をする姿に感動したというエピソードです。教師という職柄、普通に生きているより多くの人と接する仕事だと思います。自分の高校時代を振り返りながらお話を聞けてよかったです。
そしてびっくりしたのは、高校の先生は地域企業への顔が広いということ。工業高校ということもあり、生徒が地元就職するのであれば、地域に根ざした高校での学びは大切だと改めて感じました。知識的な学び以外にも地域のことを多く学んで幅の広い視野ができるといいと思いました。
有嶋先生のように、日福を卒業して岐阜で頑張っている人のお話を伺うことができ、自分の今後のビジョンを考える材料になりました。
国際福祉開発学部 町野紗希衣