ここはみんなにとっての「家」。良い時も、悪い時も、
どんな時でも、子どもたちが一緒にいてくれる。
岐阜県岐阜市出身の小酒井智子さん[4年目。児童指導員。向かって左]と加藤愛歌さん[3年目。保育士。向かって右]。大学時代はそれぞれ子ども発達学部、社会福祉学部と別の学部での学びを経て卒業。その後、明治時代から続く歴史が長い児童養護施設、社会福祉法人日本児童育成園へ就職。現在は職場で支え合いながら働かれているお二人にお話をうかがいました。
━━現在はどんな仕事をされていますか?
小酒井さん|朝、子どもたちを起こすことから始まり、一緒にご飯を食べて、学校へ送り出し、帰ってきたら宿題を見て、遊んで、お風呂に入って。私がいるホームは小学校1年生から高校3年生までの子どもがいるので、これが毎日の流れです。ここは、全体が大きな施設ではなく、個別に分かれていて、一つ一つが家と考えてもらうとわかりやすいですね。
加藤さん|私がいるところも地域小規模施設で、子どもたちは3歳から上は高校2年生です。小酒井さんと同じように、子どもたちと一緒に生活していますが、他には、職員でケース会議をしたり、親御さんへの連絡調整を行うこともしています。このホームをどうしていきたいかをみんなで考えながら過ごしています。
━━職場ではどのような役割を担っていらっしゃいますか?
小酒井さん|子どもからすると親がわりですね。それが一番大きいと思います。今のホームではスタッフで職歴が一番長くなったので、全体を見ることができるようにと思っています。また、このホームは、それぞれのスタッフが得意なことを活かしながら子どもとかかわっています。私は子どもたちの勉強をみることが多いので、解らない所をそのままにしないようにしています。
加藤さん|私は住み込みで働いているので、いつでもこのホームにいる安心できる存在を目指しています。また、経歴は中間なので、立場も中間。先輩と後輩の間に立って両方をつないだり、子どもとスタッフをつないだりと、ホームがうまく回っていくようにみんなの間に立てるよう心がけています。
━━どうして岐阜で働こうと思われましたか?
加藤さん|大学に入学するときから児童養護施設で働くことを考えていました。実家が育成園の近くで、小学校のころから育成園で生活している子と一緒に過ごしてきたので、ここのことは良く知っていいたことは大きいですね。
小酒井さん|私は、正直に言うとどうしても岐阜がいいというわけではなかったです。最初は特別支援の教諭を目指していて、教育実習に行ってみて自分が思っていた仕事との違いに気づきました。勉強を教えたいのではなく、生活を見ていきたいのだと。それが児童養護施設に一番合っていると考え、進路変更してここに就職しました。
━━働いてから気付いた岐阜の魅力はありますか?
小酒井さん|ここの施設は特にですが、歴史が長く地域に根付いているので、養護施設に対する地域の方の理解が深いように感じます。一つの家として地域からも見てもらえているといった感じでしょうか。
加藤さん|私も感じます。毎日のように地域の方と関わりがあり、子どもたちにも声をかけてもらえます。地域の方の理解があり、助けがあるから、安心して生活していける環境があるのだと思っています。また、公園など、子どもたちと一緒に遊べる場所がそろっています。観光地もたくさんありますし。
小酒井さん|確かに公園は多いですね。高橋尚子さんの尚子ロードや金華山の登山道など、身体を動かせる場所も近くにあることはいいですね。
━━お二人にとって働くやりがいは何ですか?
小酒井さん|子どもたちは成長がすごく早い。それを見ることが楽しみであり、やりがいです。とにかく見ていて楽しいですね。毎日子どもとケンカもして腹も立ちます。今も絶賛ケンカ中ですし。でも、それも子ども。嫌なこと以上に楽しいことが多いのが子どもの魅力だと感じています。
加藤さん|私もケンカと言い合いは日常です。傷つく言葉を言われることもあるけど、かわいいです。小さい子ほど成長の様子が見えるし、反応が毎日のように変わっていき面白いですね。ただ、その分責任の大きさは感じています。私の言葉づかいを真似するのをみると、私のかかわりが大きく影響しているのだと実感します。
小酒井さん|最初はやりがいを感じるよりも、子どもとの信頼関係も全くなく、自分が伝えたいことも伝わらないことばかりで本当に大変でした。でも、そんなことを繰り返してお互いの思いを伝え合うなかで、信頼関係もでき、相手に合った伝え方ができるようになってきました。
加藤さん|私もうまくいかないこと、不安なことばかりでした。「あの人の言う事は聞かなくていいよ」って子ども同士で話している声が聞こえてきたりして。でも、最近は自分がだんだんと子どもとの関係を作れてきていることが嬉しいです。こちらが子どもたちに支えられているなと感じています。
━━最後に地元就職を目指す後輩へのメッセージをお願いします。
小酒井さん|新しい環境で、新しい仕事を始めることはとても大変だと思います。だから、知っている土地、支えてくれる人がいる地元で働くことはとても良いですね。
加藤さん|そうですね、地元は安心して仕事ができる環境ですね。自分が一番よく知っている場所で働くことは、子どもたちにも地元の魅力を伝えられるというメリットもあります。
小酒井さん|あとは遊びを含めて思いっきり活動しておくことでしょうか。私は、郡上で子どもたちと活動する冒険キッズに4年間参加していました。その経験は今の私にとって大きいですし、園長も冒険キッズに関わっていらっしゃったので、話で盛り上がります。
加藤さん|私は、ずっとラクロスをしていました。その活動を通じて今でもつながりがある仲間ができたことは、働いてから心強かったですね。
〜インタビュアーの感想〜
今回のインタビューを通して、岐阜県の魅力や良さを改めて感じることができました。また私の将来の夢でもある児童養護施設の職員の方から、仕事の内容や1日の流れなどの具体的な話をうかがうことができ、施設の職員の仕事を前よりイメージしやすくなりました。また、お話の中で子どもたちと公園や金華山に登ったりするということをうかがいました。これは自然豊かな岐阜県だからこそできる子どもたちとの関係づくりの1つであり、岐阜県ならではの環境を活かしながら働けることは素敵なことだと思いました。岐阜県の魅力を皆さんにもっと知ってもらい、Uターン就職をする学生が増えるといいなと思います。
社会福祉学部社会福祉学科 松山詩歩