【卒業生取材】サンビレッジ岐阜を訪問

目に前の方に、自身を尊く思い、

人生を全うする意義を感じてもらいたい

卒業生の活躍を取材する企画。今回は岐阜県郡上市出身の井上梓美(いのうえ あずみ)さん[2008年卒]の職場を訪問しました。井上さんは、美浜キャンパスの社会福祉学部で社会福祉士を取得後、専門学校で言語聴覚士を学ばれています。現在は社会福祉法人新生会のサンビレッジ岐阜で働かれて10年目。インタビュアーは、社会福祉学部2年の杉岡真帆さんがつとめます。
━━現在はどのようなお仕事をされていますか?
言語聴覚士としては、言語に障がいがある方に対してリハビリをしています。高齢者の方が多いですが、小さなお子さんも担当しています。集団でリハビリを行うこともあれば、ご自宅を訪問して1対1で行うこともあります。利用者の方が、その方の暮らしの中で困らないようにリハビリをすることが役目ですね。
━━他にはどんなお仕事をされていますか?
社会福祉士が活かされているのは、まちづくりの仕事です。ここサンビレッジ岐阜は「赤ちゃんから高齢まで安心して暮らせるまちづくり」をコンセプトに、シティータワー43自体が一つの“まち”として機能しています。その中で、住民の方やそのご家族、地域の方が楽しく交流してつながれるように、様々な仕掛けづくりをしています。例えば、体操をしたり、小物づくりの教室を開いたり、茶話会を企画しています。専門職という立場で関わるのではなく、町の住民としてみなさんと関わっている感じです。
  
━━この仕事の役割はどのように感じていますか?
私の全ての仕事は、目の前の方や、そのご家族が望んでいる暮らし方や生き方を実現していくことだと思っています。例えば、研修の企画をする委員会の委員長を担当しています。その中で、色々な職種の方が集まって学ぶ「ごちゃまぜ研修」に携わっています。その研修では、参加者の方に、いかにお互いの仕事を理解して、自分がどう動けばいいかを考えてもらいます。現場で多職種の連携が高まることで、利用者さんやご家族の望む暮らしにより近づいていきます。
━━この仕事をしてから、どのような能力が身につきましたか?
相手の言動の背景にある意図や本当の想いを意識できるようになりました。働き始めたころは、その方がおっしゃったことをそのまま自分の中に入れるだけで精一杯でした。でも、仕事を続けてきて、高齢者の方にどのように残りの人生を生きてもらうか、いかに最期を迎えてもらうか、そのために自分に何ができるのかを考えるようになりました。そうした時に、相手の方がこれまでの人生をどう生きてきたのかまで考えながら、お話を伺うようになりました。
━━人生の最期に関わることは、辛いことも多くないですか?
確かに、突然の別れなど、悲しいこともあります。その時は、ご家族と一緒にご本人のことを話して、悲しみをわかち合います。また、スタッフ同士でも想いを話して共有し、支え合っていますね。関わった後は、毎回必ず、自分がしたことがご本人にどう影響していたか、ご本人の本当の想いを理解できていたか、ご家族が納得できた別れになっていたかなどを振り返って、次の仕事につなげていくことを意識しています。
  
この仕事のやりがいはどのようなことですか?
利用者の方の姿や声はやりがいですね。「井上さんがきてくれると家の中が明るくなる」と言われると、関係が築けたなと嬉しく感じます。この仕事は、利用者さんやそのご家族と一番近い位置で働けます。その方々の想いにも近くで触れていくため、信頼関係をつくらないとできない仕事です。自分の意思が言葉で伝えにくい人が多いですが、関係ができて、やり取りの中でお互いに気持ちが通じ合えた瞬間は、本当に嬉しいです。
━━岐阜で働こうと思ったのはどうしてですか
自分が目指していたことにぴったりのフィールドが岐阜にあったからです。私は、祖母の言語障がいがきっかけで言語聴覚士に関心を持ったのですが、福祉も学びたいと思い、日本福祉大学へ進学しました。その後、やっぱり最初に目指した言語聴覚士も勉強しようと決めて卒業後に専門学校へ通いました。就職の際に、福祉の現場で、より生活に密着した環境で働いていきたいと思っていた時、今の職場と出会うことができ、ずっと岐阜で働いています。
━━働いてから感じた地域の魅力はありますか?
人間関係が希薄でなく温かいところです。ここでも毎月防災訓練を行いますが、皆が参加してくれて、つながりができていきます。また、地域に出ると社会資源がたくさんあることに気づきました。今はまだ活用しきれていない部分もあるので、今後は、地域の方が、地域の中にその人なりの居場所を感じられるように、もっと地域とつながっていきたいと考えています。
  
━━この職場の魅力はどんなところですか?
色々ありますが、子育てをしながら働けるところは非常に助かっています。職場の中に保育園があるので、子どもと一緒に出勤して働いていました。また、会議も子連れOKの職場なので、卒園した後も子どもを連れて来て会議や職員向けのエアロビ教室に参加しています。
最後に地元就職を目指す後輩へのメッセージをお願いします。
高齢者分野の仕事はとても素敵な仕事です。働く中で、自分もこんな風に年を取りたいなと思える方にたくさん出会えます。もちろん、悲しいことや大変なこともありますが、一人の人間が、人生の最期の姿を見せてくれるということは、とても大切な事なのだと感じます。その方のこれまでの生き方、人生をたくさん聴いて、高齢者の方に育ててもらい、自分の人としての幅が広がりました。そんな幸せな仕事に岐阜で関わる学生さんが増えてくれると嬉しいです。
〜インタビュアーの感想〜
井上さんにお話を伺い、大変な事や今課題と感じている事、苦労している事も含め、「仕事を楽しんでいる」ということが伝わってきました。「命が続く限り、1日でも長く長生きしてもらうために支援はしているけど、死は終わりじゃなくて思い出と共に生きている」という話を聞いて、私もそんな時が来たら利用者に後悔のない関わり方をしたい。利用者自身もこの人たちに看取ってもらえて良かったと思われたいと感じました。「看取る」というのは悲しい事だと思っていましたが、とても幸せな事なのだと思えるようになりました。
私も、年をとることを楽しみだと感じられる人生を送れるようにしたいです。

社会福祉学部社会福祉学科 杉岡 真帆