2015年6月3日(水)、東海市役所の地下会議室にて、「地域包括ケア100人会議」が開催されました。医療・福祉関係者だけでなく地域住民、行政職員など多様なメンバーが約160人が一堂にまりました。
いわゆる団塊の世代がすべて退職をして高齢者になる2025年問題に、今から対応していくために、政策として「地域包括ケアシステム」の構築が進められています。「地域包括ケアシステム」とは、「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度の名介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制」※1のことです。
この「地域ケア会議」は、この「地域包括ケアシステムの構築」にむけて、「多職種による個別事例の検討を通じ、高齢者の自立に資するケアプランにつなげていくとともに、 個別事例の検討を積み重ねることで、地域課題を発見し、新たな資源開発などにつなげていく」(※1:P46)ことを目的として開催されたものです。
この日は、まず日本福祉大学の地域ケア推進センターの奥田佑子研究員から、「東海市における介護保険の利用状況〜要支援者と高齢者に着目して」というテーマで、2015年の社会福祉制度改革の中で、制度のはざまに置かれ、制度に基づく社会サービスがうけられなくなる介護保険の要支援1,2にあたる人のサービス利用状況についてと、これから増えていく認知症高齢者の実態と介護保険の利用状況についての現状分析と、クロス集計をもちいた分析から導き出される課題について報告がありました。
報告によると、まず、介護保険利用者のうち約16%が予防給付を利用しており、その半数は解除がなければ外出が難しいというものでした。また、認知症初期の人も半数近くいるとのことでした。
次に、認知症高齢者の介護保険利用の特徴は、要介護1.2では7割、要介護3以降では8割以上の人が認知症であるとのことでした。とくに印象的であったのが、「一人暮らしで認知症の人に対応する支援も考えていかないといけない」とのことでした。
これらの難問をどう考えていくか。
次のパートでは、同じく日本福祉大学地域ケア推進センターで、社会福祉学部原田正樹准教授から、「東海市の地域包括ケアシステム今後の方向性について」というテーマで、今後どう対応していくのか、議論に向けた的確な情報提供と論点の整理が行われました。
と、その前に、みんなで背伸びをて、緊張をほぐしました。
原田准教授によると、前提として「今回の介護保険の改正は、日本の社会保障制度全体を考えていく中で、考えていかないといけない。地域包括ケアシステムは、そういった背景からでてきたことを覚えておいていただきたい。」と、超高齢化、家族・地域社会の変容、非正規雇用の増加など雇用環境の変化などに対応した全世代型の「21世紀(2025年)日本モデル」の制度へ改革することが喫緊の課題とわかりやすく整理し、議論の足場をつくりました。
居住環境は、まで考えてこなかったが、今回ここが注目されている。
住まい、介護問題、医療とのつながり、生活支援、介護予防。地域包括ケアでは、これらの5つを考えていこうとするのが国が出している方針。
しかしながら、児童福祉、障碍者福祉、生活困窮者の自立支援などの「制度のはざま」の問題も考えていかないと10年後に使えないものになってしまうと、危惧していました。介護保険の改正で、公的な社会的サービスを受けられなくなる人や、生活困窮者の家族をどうみていくか、を課題としていました。
また、「どういった範囲で地域包括ケア」を考えていくかが大事と、現在おおむね30分くらいで駆けつけられるエリア(中学校区域)とされている日常生活圏の設定が課題であるとしました。
そして、包括ケアシステムのゴールは、「1人暮らしで、認知症の、要介護2の人が地域で安心して暮らせる町をどう地域の中でつくっていくか、専門家だけでなく、ここにいるみなさんがしっかりと考えていかないといけない。」と論点を整理しました。
その後、どのようにこれらを議論していくのか、東海市の地域包括ケア推進会議の枠組みを説明した後に、集まった人でグループをつくり、議論の場が設けられました。
さまざまな背景をもつ方が、それぞれの立場から知恵をだし合うことで、東海市が掲げる地域包括ケアシステムのビジョンである「市民ひとりひとりのしあわせと、普通の暮らしをまもるために、医療と介護・福祉と地域住民がつながり、支え合うまちをつくる」は達成されのだということを実感した時間となりました。
【参考資料】
※1 地域づくりによる介護予防推進支援事業 第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議 資料2